※レガ鹿ネタ




突然、瞼の向こうの世界が赤らんだ。
赤いのは自分の血流。
つまりは、誰かがカーテンを開けた。

が身じろぐ。
嫌そうに布団を頭まですっぽり被ってしまった。

「何時まで寝とんのや」
「ん…良いんだ、今日は休日だからよォ」
「休日やからって何時までも寝とったらアカンて!」
「嫌だ、オレァ寝る」
「ええ歳こいてグズるな、アホ」
「えー…」

布団から手だけ出し、その手が口パクのような動きを示す。
見ていると妙に腹の立つおちょくり方だ。

「…。わかった」
「お、ジンが落ちた。じゃあ、遠慮なく寝るぜ」
「そないベッドに居たいんやったら居させたるわ」
「ん、居る」
「その代わり、わしも退かへんで?……の上から」
「あ?」

足元の方から徐々に重みが増す。
何事かと布団から出る前に、手が掴まれた。

指が絡む。

布団が開き、ジンが自分の上に居る。

「大体、不法侵入したったのに何のツッコミもないっちゅうんも寂しい話やで」
「……?お前、昨日居なかったっけ?」
「はぁ?」
「……、夢か」
「な…」
「お、顔真っ赤にさせやがって可愛い奴。
 こういう迫り方するのに純なんだもんなァ」
「アホ!誰が純や!誰が!」
「へへッ」
「……ど、どない夢見とったん?」
「いや、そう言われると覚えてないからなァ…けど、ジンが居たのは確かだ」

目を細めてジンを撫でる。
――この男はいつもそうだ。
雰囲気など気にしない。
それが自分で逃げ場を塞いでいることなど、気が付いて居ないのだろう。

思わず溜息が零れる。
そのままに唇を寄せた。

「ほんま、アホや」
「何がだ?」
「普段は自覚あってやっとるクセに肝心なときに自覚があらへん…。
 あー、ほんまもんのアホやで…」
「いや、だから何が?」
「まだ陽が高いっちゅうのに…」
「え?」
「もーええ、決めたわ。
 今日はの事弄り倒したろ」
「は!?」

状況が飲み込めず声をあげる
一方ジンはのボタンに手をかけていた。
彼がしようとしていることに気が付き、慌てて拒む。

「お、おいッ。まだ朝だろ!?」
「あー、その台詞な。それは今から5分前にいう事や。
 わしが此処に乗った時に言わなアカン、無効や無効」
「えー?オレの意思は?」
「そんなん知らん。来い言うたんは自分やで」
「朝飯食ってないんですが?」
「食前運動、丁度ええんとちゃうか」
「……怒ってるのか?」
「わしなぁ、の無自覚ボケ、好きなんやけどな。
 時々ツッコめへんねん。”ボケ”が”誘っとる”ようにしか取れへんのや」

すまんな、との頬に触れる。

「……ボケてるつもり、ないんだけどな。
 誘ってるつもりもない」
「わかっとる。せやけど、それを簡単に受け流せるほど優しゅうないで」
「カーテン…開けたままなのか?」
「たまにはええやろ、こういうんも」
「………」
「…、恥ずかしいんか?」
「まあ…部屋の隅々まで見えるほどの明るさだし」
「ほんま、時々そういう可愛えこと言いよるわ」

彼の余裕の態度が揺らぐと堪らなくそのまま崩したくなる。
やんわりと唇を重ね、味わう。

そこで、ジンがこのまま事を行う気だというのを悟る。

何時もとは明らかに違う”明るさ”
それが何時もとは違う反応に繋がる。

「……
「…何だよ」
「わしの前だけな、そういう顔するんは」
「…、馬鹿。当たり前だろ…!」

恥じらいを誤魔化すように、ジンの頭を引き寄せて口付けた。
それがまた可愛いのだと笑う。

―――外は晴れ。
暖かな日射しが窓に差し込んでいた――。



Fin...


2011/02/28/03:08